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おかしい。先週作ったときは、こんな味ではなかった。
「高橋……勝手に何か入れたか?」
高橋はこちらを見ながら抹茶オレをすする。
「いやいや、味変わってないし。小野が来るまで俺ずっと寝てたやろ」
「週明けだというのに、少し疲れすぎじゃないか小野君? この味なら、上に出せそうだ。今日はゆっくり過ごしなさい」
そう言って部長は部屋を出て行った。
「ふぃー、ちかれたー」
高橋は残りの抹茶オレを三人分飲み干し、机に突っ伏した。
今日するはずだった書類の山を高橋の頭の横に置き、会社を後にした。向かったのは宝石店。指輪を買うためだ。
携帯が鳴る。彼女からだ。
「大ちゃん、おなかすいたんだけどー」
不機嫌な声がする。
「そんな事電話されても…」
「ねぇ、昨日のお店また行こうよ」
「そうだな行くか」
いや待てよ、プロポーズ場所は見晴らしの良いレストランを予約していた。
「悪い。今度は別の店にしたいんだ」
「……いやだ」
そして電話は突然切れた。
怒らせてしまっただろうか。皿に乗せられた肉の光景が匂いとともにフラッシュバックする。それを上書きするように脳裏には、肉にされたであろう男性の姿と悲鳴、狂乱する店内。やはり、あんな所にはもう行きたくはない。さて、指輪を買わなければ。
火曜日
相変わらず飯がまずい。腹が減ったが、食べ物を前にすると食欲が無くなる。
水曜日
最近イライラすることが多い。今週の乙女座は一位のはずだろーが、くそっ……
木曜日
プロポーズまであと三日だ。早く彼女に会いたい。 レストランの予約を取り消した。場所を変えよう。
金曜日
あと二日。心臓の高鳴りを抑えられない。仕事中も高橋に、顔がのろけていると言われた。
土曜日
嫌がる体に逆らって、ご飯を腹に流し込んだが吐いてしまった。その後は一日かけてプロポーズで彼女に送る言葉を考えた。早く明日にならないかな
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