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…何の変哲もない日常、オレたちのいつもの会話。
このままでいい、とオレは思う。
恋なんて、一時の気の迷いだ。
長い一生の内の、一瞬の心の乱れだ。
たまたま高校で知り合って、
たまたま同じクラスで、
たまたま隣の席で、
たまたま気が合って。
オレたちはこれからも、こんなたまたまでいいと思う。
…そしてその内、たまたま離れてしまうんだ。
「ういーっ! しかし寒いっ」
アズキがマフラーに自分の顔をうずめながら言った。
「…冬だからな」
「ああ冬だ」
「寒いのが当たり前だ」
「ああ、しかももうすぐクリスマスだ」
「…」
そん時、アズキが「あ」と言ってオレを見た。
「チカ、携帯鳴ってる」
「…鳴ってねえよ」
「オレのだよ、チカ。 ブルブル言ってる。 取って」
「…なに言ってんだ」
「オレ、両手塞がってんじゃん、取って」
「…どっからとんだよ」
オレが眉をひそめてそう言うと、アズキがくいっと自分の腰をオレの方に向けた。
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