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「へ?」
「3万だな」
「…3万だけど」
「…分割にしてくれ」
「…わかった」
マジで?
なんだかわけがわからず頷くオレを、サトが睨む。
「おまえ、約束だかんな」
「…」
「絶対、なんにも考えんなよ」
「…」
「それと」
サトが言った。
「席も変われ」
「…はあ?」
「3万払うんだから、席も変われ」
「は? おまえと変わんの? おまえ、なに言ってんの?」
「バカ、おまえがこのクラスの他のヤツと変わるんだよ」
「…」
ちょっとだけ、オレの顔が固まった。
サトはそれに気付かず、教室の中を見渡す。
「あ、あそこがいい」
「…」
サトが選んだその席は、廊下側の前から2番目辺り。
窓際近くで後ろ側のこの席からは、かなり遠い。
「…あそこ、辻くんの席だし」
「オレが話してくる」
「いや、辻くん、真面目だし、目ぇ悪いし」
「ついでに金も借りてくる」
「いやいやいや… サトくんってジャイアンだったの?」
「いいから! おまえは何も考えんな!」
言い放って、サトが辻くんの席に行った。
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