01*chika

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放課後。 靴箱の前でアズキが言った。 「…チカ」 「…」 「…好きなヤツ、いんの?」 「…は?」 突然のその質問に、オレの顔が一瞬で固まった。 「あれ、なにその顔」 「…別に」 言って目を逸らすオレに、アズキがまた。 「いや、なにその顔。 オレ今、かなり萌えたんすけど」 「…意味わかんね。 …早く靴はけ」 「あ、オレ今両手塞がってる」 「…」 見ると、アズキの両手は制服のポケットに突っ込まれたまんまだった。 「…手ぇ出せ」 「出せない」 「なんで」 「寒いから」 「…」 オレは無言のまま、アズキの靴箱からスニーカーを出す。 そして匂いを嗅ぐと、 「くせっ!」 と言って、その靴を土間に投げ捨てた。 「ひどい!」 「あまりにも臭かった…」 「それが酷すぎる!」 アズキが両手をポケットに突っこんだまま、投げられたスニーカーに走り寄り、足で器用にそれをひっくり返す。 オレは気付かれないように少し笑って、その様子を傍観した。 .
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