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「チカ、井上に告られたって?」
「…」
「…すっげえ噂になってる。 井上っつったらウチの学校のアイドルじゃん」
「…」
「で、好きなヤツいるって断ったって聞いた」
「…知らね」
「教えて」
「いない。 嘘ついただけだ」
「…」
「つうか離せ。 気色ワリィ」
「…」
アズキの手が緩み、オレは温かいその中から自分の手を引っこ抜いた。
冷たい外気が、異様に温まったオレの手を襲い、アズキのポケットに入れる前より何百倍も寒く感じる。
「…」
オレは何かを誤魔化すように、マフラーに顔を埋めた。
そしてチラリとアズキを見る。
目が合った。
「 …おまえ、携帯いいの?」
「…あ」
それまでオレを見ていたアズキが、「忘れてた」と言ってさっきとは反対のポケットを顎で指した。
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