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『アズキくん…』
「うん」
アズキの冷たい返事。
初めて聞くその声に、オレは少し引いてしまった。
『アズキくん… なんで別れるっていうの…?』
「別れたいから」
オレはアズキを見た。
アズキは目を伏せ、オレの手を見ている。
『でも私、アズキくんのこと、やっぱり好きだし、別れたく 「ごめん」
アズキが三上の言葉を遮った。
「オレが悪いんだ」
『…好きな子って誰?』
三上の声に、オレの手がピクリと揺れた。
アズキがそれに気付き、オレを見る。
オレはなぜだか舌打ちすると、表情を隠すように顔をそむける。
「…悪いけど」
アズキが言った。
「今、そいつ、目の前にいるから」
『…え?』
瞬間オレは、手の中の携帯をアスファルトに叩きつけたい気分になった。
ギリリと奥歯をかむ。
「ごめん」
アズキが言って、オレの手首をつかんだ。
そしてもう片方の手もポケットから出すと、画面を操作し、彼女との縁を切った。
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