27人が本棚に入れています
本棚に追加
「せっかくもらったんだ、つけてみたらどうだ?」
「っ!」
突然部屋に出現した気配と聞き覚えのある声に、ユアは息を飲んで振り返った。ユアの後ろに立っていたのは、闇の中に現れたあの死神だった。
ユアは距離をとりながら、その死神を見た。無意識のうちに、胸が大きく上下する。
明るい部屋で見てみれば、死の間際ではほとんど闇に同化していた死神の姿をきちんと認識できた。
漆黒の長髪を一つに結い、血のように真っ赤な切れ長の瞳、触れば千切れてしまいそうな襤褸布を纏っているのは、意外にも若く整った顔をした青年だった。
闇の中で黒光りしていた大きな鎌は、今は持っていない。その代わり、死神の肩には角と蝙蝠羽の生えた兎が乗っていた。
「貴方……」
「なんだ、ユアリアーナ」
両親ですら滅多に呼ぶことのない正式名で呼ばれ、ユアは顔をしかめた。
「その名前で呼ばないで。ユアで良いわ」
「そうか。私はディア。これは悪魔のブオだ」
あっさりと言われ、ユアは少々拍子抜けする。ディアは人好きのする笑みでにっこり笑った。
「気分はどうだ? 変わったところはないか?」
思いがけず優しい言葉をかけられ、ユアは咄嗟に答えられない。そんなユアの顔をディアが覗き込む。
「どうした?」
そんな死神の馴れ馴れしい態度に、ユアはため息をついた。
「ごめんなさい、あまり、人と話すのは得意じゃないの」
「なんだ、よそよそしいな。命の契約を交わした仲だろう?」
ディアににっこりと笑いかけられ、ユアは当惑する。すると今まで黙っていたブオが口を開いた。
「ディア、それくらいにしておけ。困ってるだろうが」
「なんだ、ブオには関係ないだろう」
人間の言葉を話したブオに、ユアはその紫水晶の瞳を見開いた。
最初のコメントを投稿しよう!