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「喋った……」
まじまじと見つめてくるユアを、ブオの金色の瞳が見返した。そしてディアの肩から飛び立つと、ユアの目の前に飛んできた。
「悪魔が喋るのが、そんなに珍しいか?」
「あ、悪魔なんて、初めて見たから……」
ユアはぬいぐるみのような愛らしいブオの姿に、触れたい衝動を覚える。そんなユアに気づいたのか、ディアが笑った。
「何、噛み付かないから触ってみたらどうだ?」
「え、でも……」
するとブオがディアを睨みつけた。しかし、その容姿のせいで迫力も何もない。
「勝手に俺の身体を触る権利を与えるな」
拒否を示すブオの言葉に、ユアは残念そうにブオを見ている。そんな視線が気になったのか、ブオが耳を垂らした。
「そんなに触りたいのか?」
遠慮がちに肯いたユアを見て、小さいため息をついたブオがユアに近づいた。ユアが恐る恐るブオを抱き上げる。
「わ、柔らかい」
「ぬ」
嬉しそうにブオを抱くユアを見ていたディアがふっと微笑む。
「君は笑っていた方が良いぞ」
「え?」
いつの間に近づいたのか、ディアがユアの顎に触れた。
「せっかく綺麗な顔をしているんだ。仏頂面でなく、もっと笑え」
「……貴方に、関係ないでしょう」
ユアがディアの手を振り払った。
「ねえ、どうして私を生かしたの? 貴方の狙いは何?」
ユアがディアを睨みつけた。
「狙い?」
「そうよ。私なんかを生かした、理由は何?」
ディアは目を細めた。ブオはユアの腕の中で成り行きを見守っている。睨みつけるようなユアの眼光に、ディアは口を開いた。
「言っただろう、私は君が欲しかった」
「だから、どうして?」
ユアはもちろん、その言葉を額面どおりになど受け取らなかった。
「説明になっていないわ」
「……君は、聡いな」
ディアは諦めたようにため息をつき、ユアの胸元を指差した。
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