第一夜 死神の契約

12/14
前へ
/252ページ
次へ
「私は、その月が欲しかった」 「え……?」 「だから、君ごと私のものにすることにした」  意味が理解できず、ユアは眉をひそめる。ディアは意味ありげにユアを見た。 「君と私が交わした命の契約は、君の命が私のものになるというもの。私が生きている限り、君が死ぬことはない。誰かに殺されない限りはな」  ユアが小さく息を飲んだ。そんな彼女の様子をよそに、ディアは続けた。 「私の命が尽きたとき、そのときは君の命もないがな」 「……それじゃあ、私は貴方のものになった、ということなのね?」 「ああ」  ユアは寝台に腰を下ろした。そしてブオを膝の上に乗せる。そしてそっと自分の石に触れた。  そんなユアにディアがそっと近づく。そしてその濃紫の髪に触れたかと思うと、いつのまに手にしていたのか、髪飾りをつけた。 「え」 「似合っている」  ユアは訝しげに眉をひそめた。 「こんな綺麗なの、似合うはずはないわ」 「何故?」 「俺の目から見ても、似合ってると思うぞ」  ディアが首をかしげ、ブオもそう言った。ユアは顔を背ける。そんなユアの髪を、ディアがなでた。 「私の可愛い姫」 「姫だなんて……」  ディアはそのままユアの月に触れた。ユアの身体が電気に撃たれたかのようにびくりと震える。その月に、神経など通っていないはずなのに。 「なんで、この月が欲しいの?」  ディアの放つ異様な雰囲気に気圧されたユアが、かすれた声を出した。
/252ページ

最初のコメントを投稿しよう!

27人が本棚に入れています
本棚に追加