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「私は、その月が欲しかった」
「え……?」
「だから、君ごと私のものにすることにした」
意味が理解できず、ユアは眉をひそめる。ディアは意味ありげにユアを見た。
「君と私が交わした命の契約は、君の命が私のものになるというもの。私が生きている限り、君が死ぬことはない。誰かに殺されない限りはな」
ユアが小さく息を飲んだ。そんな彼女の様子をよそに、ディアは続けた。
「私の命が尽きたとき、そのときは君の命もないがな」
「……それじゃあ、私は貴方のものになった、ということなのね?」
「ああ」
ユアは寝台に腰を下ろした。そしてブオを膝の上に乗せる。そしてそっと自分の石に触れた。
そんなユアにディアがそっと近づく。そしてその濃紫の髪に触れたかと思うと、いつのまに手にしていたのか、髪飾りをつけた。
「え」
「似合っている」
ユアは訝しげに眉をひそめた。
「こんな綺麗なの、似合うはずはないわ」
「何故?」
「俺の目から見ても、似合ってると思うぞ」
ディアが首をかしげ、ブオもそう言った。ユアは顔を背ける。そんなユアの髪を、ディアがなでた。
「私の可愛い姫」
「姫だなんて……」
ディアはそのままユアの月に触れた。ユアの身体が電気に撃たれたかのようにびくりと震える。その月に、神経など通っていないはずなのに。
「なんで、この月が欲しいの?」
ディアの放つ異様な雰囲気に気圧されたユアが、かすれた声を出した。
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