第一夜 死神の契約

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 その報せを受けた男は、傍目には顔色も変えなかった。その様子を、臣下達が怯えながら見守っている。 「ディアが姫を横取りした、だと?」 「は、はい、ドルゴン様……ご法度である、命の契約をしたと、思われます……」  王――ドルゴンは盛大に舌打ちをした。臣下達が身をすくめる。 「あいつは一体、何を考えているんだ!」  まさしく咆哮と呼ぶに相応しい怒声が、窓を震わせた。その顔がみるみる怒りに歪められていく。 「天界を出し抜く好機だったのだぞ! 私は何度あいつに邪魔をされなければいけないんだ!」 「陛下、落ち着いてください……」  怒りに任せた低い声のせいで玉間の天井が震え、石壁に亀裂が走った。頑丈にできているはずの、この部屋の壁が。 「黙れ!」 「がっ」  ドルゴンが右手を振り払った。それだけで、ドルゴンを抑えようとした臣下が吹き飛ばされ、壁に身体を打ちつけられて気を失った。 「許さんぞ……、こんなことは、断じて許さんっ」  唸るようなドルゴンの言葉に、その場にいた者達は震え上がった。
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