27人が本棚に入れています
本棚に追加
その報せを受けた男は、傍目には顔色も変えなかった。その様子を、臣下達が怯えながら見守っている。
「ディアが姫を横取りした、だと?」
「は、はい、ドルゴン様……ご法度である、命の契約をしたと、思われます……」
王――ドルゴンは盛大に舌打ちをした。臣下達が身をすくめる。
「あいつは一体、何を考えているんだ!」
まさしく咆哮と呼ぶに相応しい怒声が、窓を震わせた。その顔がみるみる怒りに歪められていく。
「天界を出し抜く好機だったのだぞ! 私は何度あいつに邪魔をされなければいけないんだ!」
「陛下、落ち着いてください……」
怒りに任せた低い声のせいで玉間の天井が震え、石壁に亀裂が走った。頑丈にできているはずの、この部屋の壁が。
「黙れ!」
「がっ」
ドルゴンが右手を振り払った。それだけで、ドルゴンを抑えようとした臣下が吹き飛ばされ、壁に身体を打ちつけられて気を失った。
「許さんぞ……、こんなことは、断じて許さんっ」
唸るようなドルゴンの言葉に、その場にいた者達は震え上がった。
最初のコメントを投稿しよう!