第一章 天笠涼子

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   街灯の僅かな灯りさえ通り過ぎるそいつに遮られて。  薄暗くなった視界に。  俄かに顔色を変えたのはとぼけた逞しい男。潜めた声を静かに紡いでいく。 「しっ。……社長、どうやら来たみたいっす」 「……連れはいる……ようね?」  どうやら黒。  涼子は直感でそう思った。  そのうえで、既にかなり遠くなっていた影達の背中を見て一言だけ呟く。  「さて、こんな面倒な探偵の真似事みたいなのは、サッサと片づけますか……」   その呟きに対して、脇の男から当たり前のように入る突っ込み。 「……社長、一応うちは探偵事務所っす」 「あーあ、ホントにいちいちうっさいわね」  隣の男をそう怒鳴りつけて。もう一度、大きく煙を吸い込んで吐き出す。  全てを吸い尽くし、残骸と化したフィルターのみを窓の外へと指で弾いた。
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