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街灯の僅かな灯りさえ通り過ぎるそいつに遮られて。
薄暗くなった視界に。
俄かに顔色を変えたのはとぼけた逞しい男。潜めた声を静かに紡いでいく。
「しっ。……社長、どうやら来たみたいっす」
「……連れはいる……ようね?」
どうやら黒。
涼子は直感でそう思った。
そのうえで、既にかなり遠くなっていた影達の背中を見て一言だけ呟く。
「さて、こんな面倒な探偵の真似事みたいなのは、サッサと片づけますか……」
その呟きに対して、脇の男から当たり前のように入る突っ込み。
「……社長、一応うちは探偵事務所っす」
「あーあ、ホントにいちいちうっさいわね」
隣の男をそう怒鳴りつけて。もう一度、大きく煙を吸い込んで吐き出す。
全てを吸い尽くし、残骸と化したフィルターのみを窓の外へと指で弾いた。
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