第五章 輪郭

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   去っていく後ろ姿を眺めながら涼子は思った。  アレは本当にただ者じゃない。  この業界にいる以上は望むと望まざるに関わらず。また近いうちに関かるもしれないな、と。  そこまで考えてフッと意識を運転に戻すと軽く息をついて。車外の景色をなんともなしに見渡していく涼子。  空は既にうす暗くなっていて。世界は夜に包まれる寸前だった。  続けて視線を中央に戻し僅かにセンターから脇へとずらす。自然に右手を伸ばして操作をおこなう。  カチリと小さな音を鳴らして、ライトがつくと走る道の前方は明るく照らされていく。  ガラガラだった道を思うままにハンドルを握って。もうかなりの距離を進んで来ていた。  いつの間にか周りを走る車の量が増してきている。  行く道の問題なのか時間の問題なのか? 地元ではない涼子には解らない。  通勤帰りと思われるスーツを着て運転しているもの。これから夜遊びに行くのだろうとすぐわかるものまで。  様々な目的を持った車。辺りを走るそれらもポツポツとフロントに光を灯らせ始めていた。  まもなく、ここら一帯は暗闇に落ちて。それを彩る光の洪水が流れていく事だろう。  そう思ったのちに、再び会見後の状況を思い出しながらそこに頭を巡らせていく涼子。
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