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流石は碓氷。
彼の情報には間違いというものが限りなく少ない。話の通り横浜ならば加藤だと。それは的確なものだった……。
車を走らせながら涼子はまずそう思った。
アクセルを踏む彼女の眼前には遮らない視界。その先に綿菓子のような雲が大きな顔をして悠然と立ち登っている。
差し込む日差しは鮮やかなオレンジ色で今まさに太陽が今日の役割を終えようとしていた。
目の端で捉える景色は颯爽と流れ。まるで早送りでもするかのように行き過ぎて。
少し開いたウィンドウから吹く風が車中に潮の香りを届け、涼子の鼻腔をくすぐっていく。
真夏とはいえ日差しも無休ではない。しかるべき時刻になればしかるべく落ちる。
今、その時刻になったのだと。
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