第五章 輪郭

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   だけど……絶対にコイツと私が分かり合える事はない。  信念。まったく結構なことだ。自己の理念に殉じて主義を貫くのは大事なこと。ただし、それゆえに他の信念と衝突する事もある。  だから覚悟も持っていろ、と。  果たして覚悟はあるのかしら? と。  この後でどうするのか、どうなるのかはまだ解らない。  ただ、私の信念と真っ向からぶつかるような事になって――その時に心がブチ折れるような事があったとしても、絶対に文句を言わせない。  涼子はいつの間にかハンドルに添えた両手に力を込めて、全力で握り締めていた。  ここまでの情報。  過去の悪事の件だけでもやりようによっては青木との交渉は可能かもしれない。  だが、彼女は当時に立件をされてない以上、これだけでは厳しいとも考えている。  青木はかなり小賢しい奴。  手元のカードのみで勝負を仕掛けて。中途半端に刺激をしてしまった結果。あらぬ方向に行かれてしまっても困る、と。  現段階で交渉という線を使い攻めると決めたわけではない。  だが、どのような案件にしても取引材料があるならそれが一番角が立ち難いとは思っている。
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