第五章 輪郭

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   ちらりと時刻を見てため息をついた涼子は考えた。  だいぶ話には時間がかかった。既に日中は使い切ったといえるだろう。しかし収穫は予想以上。  加藤は本気でここまでやるか? みたいなヤツではある。  行動を予見して場所を指定したうえ仲間で囲む。まあ、一見を相手になら警戒は当然。百歩譲ってここまではヨシとしよう。  けど、身代わりまでの用意はやり過ぎ。日本人の感覚でいう用心深さを越えている。  治安が以前に比べて悪くなったとはいえ、いきなり弾かれるような事はこの国ではほぼない。まだまだ他国に比べて安全だといえよう。  だからこそ逆に。  加藤の行動はそこにのんべんと住んでいた人間の発想じゃない。  陳という偽名も相まって、もしかしたらこっちの人間ではないのではないか?  どちらにしても最初に加藤と名乗ったアロハと本物の加藤。  この二人の本来の立ち位置はまるで逆だというだけはわかった。  彼女はそう思っていた。
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