第九章 涼子と凛花

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   1  青木のマンションに突入して。すったもんだがあったその翌日。  涼子は渋谷の天笠シークレットサービス。その事務所にいた。  自らの席にて、両肘を机についてその上に顔を乗せている。  康介の怪我は本人の言うよりは少し酷いもので。弾丸が肉の表層を抉っていた。  銃創はもちろん。切り傷や怪しい傷の治療は警察に届ける義務が医者にはある。  だが、友人である神崎総合病院の精神科医に涼子はだいぶ以前、面倒があって既に医師資格を剥奪されてはいるが腕だけはいいという医者を紹介されていた。  それ以降、馴染みとなった闇医者を頼って治療を受けたところ見た目よりはたいした事がないとの話。  歩くのにも支障はなく、なにはともあれ安静にしていればすぐに完治するそうだ。  午前中、一緒に医者にまでいってそれを聞いた涼子は心底からホッとした。  そして今、彼女は事務所にて凛花を待っている。  壁に掛かる丸時計に涼子は視点を移す。時刻はまさに六時を告げるところだった。
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