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車を降りた二人は地図を片手に目的の家へと向かって歩みを進める。
やがて。
ひとつの大きな一建家に辿り着いた涼子はその家をじっと見上げながら声を出した。
「康介、たぶんこの家だとおもうわ」
それを聞いて康介が外門にかかる表札を見て言った。
「間違いないっす。田辺ってなってるっす」
「そのようね。ではでは。敵さんがまだ、まごまごと外堀を埋めているだろう隙に。我々は直接本丸へと乗り込みましょう」
「うっす」
康介の了解に涼子は躊躇なくインターホンを押した。
しばらくシンとするような間があって。白く四角い形をしたインターホンが静かに人の声を紡いでいく。
『はい、田辺ですが?』
年の頃六十代の男性の声で。
それに対して康介へ向け親指を立てた涼子がインターホンに向けて喋りかける。
「夜分すいません。私、天笠と申しますが本日はお嬢さんの件で伺いました」
『……洋子のお友達ですか? あの子なら今日、明日は家内と一緒に出掛けておりますが』
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