第十三章 交渉

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  「いえ。お嬢さんの件ですが、用件は田辺さんに、なんです」 『は、はぁ……どういう事でしょうか?』 「……驚かないで下さいね?」  そう言って今日手にしている大きなトランクケースに手を伸ばした涼子は、何枚かの写真を取り出してインターホンのカメラに見えるように向けていく。 『…………、』  反応をしないカメラに向かって一枚、また一枚と。 『あ、』  小さな声があがって。 『あっ、あんたっ! ど、どういうつもりだ!』  突然声を荒げた田辺。 「どういうつもりと言われましても。とにかくこの類のものがまだありますので一度開けて下さいませんか?」 『きょっ、脅迫をするつもりなら今すぐに警察を呼ぶぞっ!』  機械越しに聞こえる激しい田辺の言葉にあからさまに顔つきを変えて涼子が言った。 「田辺さん。ちょっと落ち着いて下さい。本気で脅かすつもりならわざわざこうして姿を現したりせず郵便受けにでも手紙と一緒に入れていくだけの事ですよ?」 『…………、』 「一度ここを開けて下さい。話をして納得がいかなければ警察でも弁護士でも好きなだけ呼べば宜しいかな、と」
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