第十三章 交渉

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  「……私では、なく……む、娘……ですか?」  涼子の言葉に大きく目を見開いて絶句した田辺。すぐに音が鳴るほど喉を動かして生唾を飲み込んでいく。  時期からみて田辺謙造が話を知っているかどうかは微妙だと考えていた涼子。写真を見せ今また脅迫の事実を突き付け。  さきほどから一挙手一投足の反応をじっと観察していた彼女は、まだ田辺がこの事実に行き着いていないだろう事を確信する。 (思った通り目端も利かずだいぶのんびりしている。むしろ間抜けなくらい……)  田辺謙造はあくまでも技術屋であり研究者であって。どうやら経営者ではないようだ。  だからこそいろんなものに手を出してその都度、安定した柱のある本業の利益さえ喰われ。今、会社を大きく傾けているのだろう。
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