最終章 二人の結論

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   1  あれからひと月。  涼子は今事務所にて康介と一緒にのんびりと出前を食べている。  襲撃騒ぎの後。専門業社に壊れた扉を直させた際、少しだけ整頓をした事務所。  時を経て、再び資料や小物が至る所に溢れ乱雑を極めていた。  特に涼子の机は紙の束がこれでもかと積み重なり樹海と呼べるほどに。  もちろんそこで食事をするわけにもいかないので、康介と向き合って来客用のソファーに腰を下ろしているわけだ。  ロッカーの上に無造作に置かれたテレビをつけながら、黙々と中華丼を掻き込む康介に涼子が声をかける。 「康介。あんたもっとゆっくり食べなさい」 「それだと食った気がしないっす……」  康介の返答に呆れたように涼子が言った。 「……ご飯を楽しめないなんて人生の半分は損しているわよ?」 「飯なんてただのエネルギー供給っす。自分には社長だけ近くにいれば損はないっす」 「はいはい。どうしようもないわね」  そう言って右手のひらを前に少し突き出して前後に往復させる。
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