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「片岡さん、ちょっといいかな?」
長い長い一日が終わり、みんなが一斉に仲良く下校を初めた。
朝、パパがお金の入った封筒を菜々に渡してくれていたので、きっとそのことで先生に呼ばれているんだと思う。
「はい、先生!」
終わりの会が終わったら渡そうと、ランドセルから出して準備をしていた。
「ありがとうね、菜々ちゃん。
学校はどう?楽しい?」
封筒を受け取りながら笑顔で先生はそう言う。
私が楽しくないことなんて知っているはずなのに、先生はわざと聞くんだ。
でも、ママには菜々がひとりぼっちのことを知られたくない。
だから思いっきり笑顔で、
「はい!」
と、菜々は答えた。
先生はにこっとしながら受け取った封筒の中身を開いた。
すると、さっきの笑顔が急になくなって、
「菜々ちゃん、これ…」
菜々はさっと先生から封筒を奪い取った。
やっぱりだ。
分かってはいたけど、封筒を先に開けるのが怖かった。
パパがお金を入れる訳がないんだ。
「ごめんなさい、どこかで中身を落としちゃったかもしれない…
また貰って持って来ます!」
さっとランドセルを背負い、菜々は教室から飛び出した。
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