ぷろろーぐ

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まだお昼だけど、外はもうだいぶ涼しくなっていた。 お日様よりも、風の冷たさが菜々に優しくしてくれる。 菜々はとにかく家に帰ってパパにもう一度お願いしようと思った。 パパはいつでも家でテレビを見ているから、きっと今もいるはずだ。 でも、どうしてだろう。 足がなかなか進まない。 早く帰らないとまたパパに怒られるのに。 車も人も通らない、小さな小さな路地。危ないからここは通っちゃいけない道だって先生は言ってた。でも、みんなが使う道を通ると、石や砂を投げられるからいやなんだ。 ふと右の塀の上を見ると、真っ白な子猫がこっちを向いていた。 にこっ、と笑いかけると、にゃあとアクビをして、さっさと塀の向こう側に飛び降りた。 風に乗って流れてきた、甘い香りが菜々を包み込む。この匂いは、ホワイトジンジャーかな。真っ白な花びらはどこにも見えないけど、きっとこの道を進んだら見えてくるかな。 少しずつ歩き出し、菜々はゆっくりゆっくり家へと向かった。
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