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居場所がない。
知っていたはずなのに。
菜々に優しくしてくれる人なんて、ほとんどいないんだ。
先生だってただの表向きの顔なんだ。
でも、たった2人だけ、菜々は知っていた。
ママと、もう一人。
菜々は家から少し離れたところにある『エイトトゥエルブ』というコンビニの前に辿りついていた。
「いらっしゃいましぇー。
あ、菜々ちゃん、今日はえらくおしょくにきたんでゃねぇ。」
ちょっと何言ってるかわからないけど、この、しぇのおじさんはいつも菜々の話を聞いてくれて、優しくしてくれる。
「あれ、菜々ちゃんなんだか汗でゃくだね、
アイシュ食べる?」
優しい笑顔が菜々に向けられた途端、突然涙が溢れ出した。
でも、おじさんには見られたくなかったから、急いでトイレに駆け込んだ。
誰かに助けてほしかった。
しぇのおじさんはきっとコンビニのお仕事で忙しいし迷惑をかけたくない。
菜々は溢れる涙を気にせずに、今日返して貰った満点の漢字テストの裏に、
助けて
と一言書いた。でも、こんなんじゃきっと誰かに捨てられてしまう。
封筒に入れておけば、きっと誰かがお金と間違えて封筒を開けてくれるかもしれない。
ランドセルの中に入っている、先生に渡すはずだった封筒を菜々は取り出した。
そして、紙を封筒の中に入れて、お道具箱からセロハンテープを出して、便器の裏に貼り付けた。
優しい人が、きっと菜々を助けてくれる、そう信じて。
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