プロローグ

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水曜日の午後9時32分、居酒屋『よろこんで』は、一日のうちの客入りの、ピークを迎えている。 「店長、料理のトッピングに使うミントが切れたらしいです! なしでいきますか!?」 騒々しい店内、際立って目立つのは新人の仕事のできなさだ。 「そうだな、仕方ない。代わりに別のミントっぽいものを乗せておけ!」 水曜日ならそれほど忙しくないと踏んで、新人をこの日に入れるシフトを組んだのだろう。 「わかりました!」 予想外の客入りに"よろこんで"いるのは店長だけ、その他のバイトからすれば、全ての客が迷惑でしかない。特に、新人からすれば。 「待ってください!」 しかし、新人の中にも、ほんのごくごく少数ではあるが、真面目に真っ正面から立ち向かう者だっている。 「メニューと違う料理を提供する気ですか! お客様がミントを食べたがっているとしたら、がっかりするじゃないんですか!?」 そう、俺のような。
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