プロローグ

4/7
28人が本棚に入れています
本棚に追加
/170ページ
家が郊外にあるせいで、乗り換えのために一度下車しなければならないのだが、その駅で降りることに、あまり気が進まなかった。 つい1週間ほど前、その駅の近くに80階建てのビルが建てられた。なんでも世界的に有名な設計士が建てたビルらしく、中途半端に都会だった駅周辺を、突如として大量の人で溢れ返らせた。 何よりも目玉だったのが、そのビルに貼りついている超大型モニター。駅から降りて1番に見えるせいで、立ち止まって見る人が道を塞いでしまい、歩こうと思えばスラローム歩行をしなければ進めない。 そしてまた、今日は一段とそのモニターを見上げる人が多かった。どこかの球団のピッチャーがメジャーにでも行ったりしたのだろうか、そんなことを考えながら俺もモニターを見上げると、なんとも奇妙なニュースが流れていた。 「埼玉県北部で、宇宙人の遺体らしきものが発見されました」 要約すると、埼玉県北部に謎の生物の右腕らしきものが発見され、あらゆる学者が口を揃えて「宇宙人だ」と言っている、ということだ。 確かに気になるニュースではあるが、家に帰ってゆっくり見た方がいいんじゃないか、とここにいる全員の耳元で言ってやりたかった。 結局最後までニュースを聞いていた俺にも、だが。
/170ページ

最初のコメントを投稿しよう!