時の砂時計

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「将慶君は何か見たいお店でもありますか?」 と麻友は自分ばかりお店を回って申し訳ないと言わんばかりの表情で覗き込んできた。 「うーん…。家具、とか。」 頭に思い浮かんだ物をとりあえず言ってみた。 「家具、ですか?」 「うん。俺って一人暮らしじゃん? それでさー…とりあえずは冷蔵庫とかベッドとか買ったのはいいんだけど、何か物足りないっていうか…。」 「もう一人暮らし始めて、そろそろ4ヶ月経ちますけどね。」 付け加えて笑われた。 こうやって会話していて思うけれど、麻友は敬語をやめない。 別にそれで麻友がいいのなら俺は構わない。 自分自身で敬語は癖になってると言うのだが、俺は悪い気はしないのもある。 たまに麻友の心情が大きく動いた時はタメ口になるんだが…。 続いて、全国的に多数店舗を構える家具屋に入った。 シンプルな柄ながらも、それがオシャレに見える。 「へぇ~…こういうオシャレな棚もあるんですね…。」 と山型の木の棚にさっそく興味を示した。 俺の家には、もちろんそういった家具はない。 一人暮らしの、殺風景な家だ。 俺はこの棚を買った場合の家のどの位置に置いて、どう使うか考えた。 まず、壁にぴったりとくっつけて、まるで雑誌に出てくるかのように、そこにCDを飾って…。 あ、もちろんそれはcenterとか麻友のCDで…。 「これなんか、いいじゃん。」 次は茶色の木、そのものの色を使った正方形のテーブルを見つけた。 「お、将慶君私とセンスが合いますね~!」
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