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恥ずかしくなって周りを見渡した。
家族連れのお客がいた。子供と父親、母親、仲良さそうに家具を見ていた。
あの家族は新しい家でも建てたのだろうか、一つ家具を見てはその家具を置いた情景を思い浮かべている瞳が輝いていた。
今の俺たちもそう見えていたのかもしれない。
「これから…だね。」
「はい。」
これから、俺たちのストーリーは始まって行く。
少し考えすぎかもしれない、重いと思われるかもしれないが、結婚まで見据えている。
将来子供ができて、家族で和気あいあいと暮らすマイホーム…。
そんなことを考えて将来に期待しないわけがない。
「そろそろ行こうか。」
「そうですね…。絶対また見に来ましょうね!」
そう言って店を後にした。
次見に来る時はきっと麻友も俺の家に住み始めた頃だろうか。
家族以外と生活…想像できない。
でも、自分の一番愛している人と一分一秒でも時間を共有したいと思うのは自然だ。
自動ドアを抜け、外に出る。
昼下がりの一番温度が上がる時間帯、高々と登った太陽が強く地面を照らす。
比較的、都心から外れたこの地は、山などの自然が残っていて、空も絵の具一色で塗り固めたように単色で瑠璃色。
ムッとした熱気が押し寄せ、今年の夏も一段と熱くなる事を予感させる。
全身からは既に汗が滲み出している事が嫌でも手に取るようにわかり、Tシャツがジックリと濡れてしまう。
両手が塞がって、汗を拭えないのがもどかしい。
夏…。
自然と1年前を思い出す…。
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