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満身創痍、背水の陣、無我夢中、この全ての言葉が当てはまる状況で俺は告白に挑んだ。
日付にして8月12日。
ライバルである笹崎峻という、アイドルとの麻友の奪い合いになった俺は波乱万丈な数ヶ月を歩んだ。
負ける気は無かった…と言えば嘘のようで本当。
本当のようで嘘。
正直に言って、前に進むのが怖かった。怖くて怖くて、仕方なかった。
もしも笹崎の方に行ってしまえば…俺は俺で無くなりそうで…。
それでも決意したあの日、麻友は来なかった。
笹崎の方に行っていた。その代わりに来たのが、麻友の親友で同じメンバーの友恵だ。
しかし、友恵は全てを知っていて、後々麻友は大遅刻をして来ることになるのだが、俺の所に来て話を聞いてくれたのは時間稼ぎ、俺が帰らないようにするための善意だったと勝手に解釈をしている。
麻友が来てからは、早かった。
気が気で無くなった俺は、もう何も恐ろしくなかった。
単刀直入に麻友に遅れてきた理由を聞くと、笹崎の所に行っていて、告白を断ったと。
もう、言う事は一つだった。
そうして俺たちは付き合う事になった。
今でさえ、あの時の記憶はまるで昨日の出来事のように安易に思い出すことはできる。
それほど俺の人生では一大事だったわけである。
次に思い当たるのは、ファーストキスをしたクリスマスだ。
だが、今のこの灼熱地獄の中でクリスマスの出来事を思い出す気分ではない。
それにしても、あの告白の日に見た花火は綺麗な『花』だった。
今年の夏も、花火を見ることができれば俺は何と幸せ者だろうか。
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