時の砂時計

16/22
前へ
/280ページ
次へ
俺の視界に入る美白な肌が眩しい。 それと対比されるように際立つ艶のある黒く、ストレートで長い髪の毛。 すっぽりと被った麦わら帽子。 どうしてだろう、どうしてこんなに俺を魅了するんだろう。 夢中になって、もう俺、自分がおかしくなってしまいそうだ。 時たま訪れる、彼女を抱きしめたくなる衝動。 まさしく今だ。 「次は、もっともっと休みを取って、キャンプに行きたいですね。 今日みたいに海に行って、泳ぎたいですし、ビーチバレーも楽しそうじゃないですか! 釣りなんか私やった事ないし、やってみたい! そして夜に食べるカレーが美味しいんだろうなぁ~…。 夜は満点の星空を見ながら、寝る…。 うわ~!修学旅行みたい!」 すると麻友は、まるで夏休みを控える小学生の下校途中みたいに走り出した。 そして片手で飛ばないように麦わら帽子を抑え、クルッと振り返り、俺に最上級の笑顔を振りまいた。 俺もつられて微笑む、自然に。 ビュッと風がふき、麻友のワンピースを揺らした。 ――その時だった。
/280ページ

最初のコメントを投稿しよう!

701人が本棚に入れています
本棚に追加