701人が本棚に入れています
本棚に追加
膝から彼女の横に崩れ落ちる、身体。
現実が見れなかった。
いや。これは現実じゃない。
違う。
違う違う違う違う違う。
間違いに決まっている、第一、彼女のような人に限ってこんな事故が起きるわけがない、それにその前の行動も怪しかった、急に道路に飛び出して、そうだ、これは演技だ、そうに決まっている、運転している人だって、普通の人なら轢き逃げなんて残酷なマネはしないだろう、これは何かの間違えだ、もしくは番組だ、彼氏の存在をバラして、ドッキリを仕掛けるという古典的なドッキリ番組にまんまと俺は引っかかっているだけだ、しかしcenterとして恋愛を公開した事には詳しく聞きたい所だが、今はそれどころではない、俺は騙されているだけだ、ダマサレテイルダケ…。
そっと頬に手を触れてみた。
冷たかった。
固かった。
痛かった。
苦しかった。
「起きて…。まだ………違うよ…。
まだ……お昼だよ…。」
必死に体を揺すった。
「ハハッ、疲れたんだよね?
今日一日付き合わせて、ゴメンネ?」
徐々に視界が広がっていく。
顔から体全体へと、広域に。
腕を見た、足を見た。
先程までの何の汚れも知らない腕にアスファルトの砂が付き、複数の擦り傷、アザ。
血、真っ赤な流れる血。流血。
その刹那、物凄い目の奥に激痛が走り目眩と吐き気に襲われる。
それでも俺は信じ続けた。
これは何かの間違えだと。
天使の身体をそっと頭の方から持ち上げた。
ダランと、俺の左手から零れ落ちそうになる頭を抱え。
黒い髪が地面にべちゃべちゃと広がる。
動かない。
よくできた人形のように、動かない。
その時、確かに俺の中で何かが切れる音がした。
最初のコメントを投稿しよう!