時の砂時計

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それは金色の太陽がジリジリと肌を焼き始める真夏の日だった。 世間一般では夏休みに突入、周りがどんな夏休みにしようか、だとか、学生はこれからの長期休暇に胸踊らせているに違いない。 それは学生の時だけであって、大人になって働き始めたら味わえない、いわば特権と言うやつだ。 その時間は決して戻ってくるわけではない、今を楽しむ事が大事だと19年間生きてきた俺は人生経験を踏まえながら一人心で語る。 そして、そんな夏休みを謳歌している連中は俺も例外ではなかった。 「うわぁ~!凄いッ!」 そう、俺の隣ではしゃぐ彼女。 麦わら帽子に純白のワンピースという、まるで夏のイメージポスターに抜擢される程に美しい。 日焼けを知らない白い肌に、光が反射して眩しい。 「ホント、こんな所あるんだね!」 彼女は両手を広げ、いっぱいに夏の潮風に一番乗りする。 「大学の友達に教えてもらって。」 俺より先に彼女は走り、くるりと振り向き片手で飛びそうになる麦わら帽子を抑えながら手招きをする、それも全力で自然な笑顔で。
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