時の砂時計

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俺の彼女は九条麻友。 日本を代表するアイドルグループの一員で…。 という説明を急に赤の他人にしたら、果たして何人が信じて、どれほどの罵声が飛び交うことだろうか。 寝言は寝て言え、そんな言葉で片付くならまだお安い事だ。 だが、それが事実なのだからしょうがない。 俺と麻友の出会いは劇的にして運命的であった。 エレベーターの中で同じ機種の携帯電話を取り間違えた所から始まった。 まさか、自分の好きなアイドルと偶然にも同じ場所でぶつかり、同じ携帯電話を持っていた、だなんて俺自身ですら疑うレベルの偶然だ。 その後は決して平坦だったとは言えないが、結果的にはお互いが結ばれた。 それが去年の8月。 つまりあれから1年もの月日が流れようとしていた、そんな今日だ。 その間に喧嘩も無かったとは言えないが、その度に仲直りをして今に至るわけである。 雨降って地固まる、そんな言葉が一番ふさわしい。 身の回りの変化と言えば、田舎に住んでいた俺が上京をして麻友との距離を縮めた事ぐらいだろうか。 相変わらず付き合いたてのように初々しい一面もあるが…。
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