時の砂時計

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時間も忘れてお互い海水を掛け合って、笑いあって、すっかり時間も過ぎた。 疲れ果てた俺らは、海岸近くの岩の上に座った。 本当に純白な肌の持ち主の彼女は、黒い髪が余計に際立つ。 容姿端麗、この言葉で飾るのにはもったいないくらい。 二人で地平線の彼方を眺めた。 この地平線ってどこまで続くんだろう。 そんな事を考え始めても霧がない、初夏の太陽の下。 ホント、俺ら2人がちっぽけに思えてくる不思議さ。 「あっ、この花綺麗!」 すると麻友は自分の脇にあった花を見つけた。 一輪の、細々と強く、蒼く太陽のように燃えるようにそびえ立つ花…。 「この花は…。」 麻友はそっとそれを手に取った。 優しく根元から。 「ワスレナグサ…だよ、きっと。」 と珍しく俺が知識人のような口回し。 高校の時に教科書に載ってあった文を思い出した。 戦に行く若い夫の為に、妻は自分の事を忘れないでほしい、という想いを込めて夫に託した。結果としては、夫は敵陣に突入するも切られ…という話ではあった。 「ワスレナグサ…?」 「ああ、『私のことを忘れないで』っていう…お守りみたいなものかな?」 「ふ~ん…。」 それを聞くと、大事そうに両手で包み、「お守り」と可愛らしくつぶやく。 それを見て俺も嬉しく思った。
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