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触れるか触れないかの微妙な距離を保ちながら、彼の腕がリズム良く動く。
カシャカシャとハサミが音を立てる度、私の小さな世界は彼の匂いに包まれた。
まるでまだ目の開かない仔猫のように、真っ暗な視界の向こうにそれを求める。
目を閉じたままそれを探し当てると、私はいつも何とも言えない幸福感でいっぱいに満たされるのだ。
「これくらいでいい?」
そう言って彼は優しく前髪に触れ、形を整える。
「うん…」
離れていく彼の温度を名残惜しむように、ゆっくりと目を開け頷いた。
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