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「………え?」
私の突然の申し出に神谷君は驚きの声を漏らした。
「神谷猛じゃないって…確認
…していい?」
神谷猛じゃない。
それを自分の手で…
確認をしたい。
「…眼鏡をとったら余計似ていると思うよ」
「うん。だけどあなたは似ているけど猛先輩じゃないって…ちゃんと認識したいの。その眼鏡が邪魔」
「………」
さっき目を閉じて眠っている神谷君を猛先輩とは思わなかった。
最初に感じた神谷君に感じた猛先輩の面影は薄れて来ている。
けど、眼鏡が錯覚を産む。
眼鏡を外したらそこにはやっぱり猛先輩が居るんじゃないかって…
「眼鏡を外した神谷圭斗をこの目に焼き付けたいの」
「!」
…下校の音楽が鳴りやんだ。
まだ、昇降口のカギは開いているかな?
この教室の窓を閉めに教員がそのうちやってくる。
早く、それまでに
確認しなくちゃ。
彼は神谷猛じゃない
" 神谷圭斗 " だって…
「…私、あなたに言われて今分かった…。
確かにあなたの中に猛先輩をずっと無意識に探してた。…ごめん」
「…いいよ」
「…え?」
少し考える風にした後、神谷君は掴んでいた私の手首を離し私を自由にした。
「眼鏡取っていいよ。
…俺を、ちゃんと見て桃花…」
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