1・駅前

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 現在、僕を悩ませているのはこの一万円札だった。僕はこの一万円を、門限までに使い切らなければならない。中学生の僕には一万円は大金だ。使い切るアイディアはなかなか思い浮かばなかった。 「いらないって言ったのに」  お祖母ちゃん家に遊びに行ったら、お小遣いだよと渡された。いらないと断ったが、ポケットに無理やりお金をねじ込んでくるお祖母ちゃんの強引さに、僕は勝てなかった。 「どうしよう」  このまま家に持ち帰ったら、お母さんに怒られる。前に、一万円をお祖母ちゃんから貰った時も、すごく怒られた。僕がお金を貰うとお母さんが大変らしい。がめついと思われるとか、お礼しなきゃいけないとか、色々と言っていた。 「お祖母ちゃんに直接言ってほしいよ」  何で僕が怒られなきゃいけないのか。僕は無理やり渡されたものを貰っただけだ。貰っちゃダメなら、無理やり渡すお祖母ちゃんを止めればいい。無理やり渡されなければ僕だって貰わない。だから、悪いのは僕じゃない。  僕ははぁとため息を吐いた。  重い気持ちを振り切るために頭を左右に振り、僕は改めて前に広がる道を見た。
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