《5》

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  「こんばんは」 「いらっしゃいませ」 いつも通りに静かなバーには数名の客がいた。 二人組ばかりで、小さなソファ席でゆったりとお酒を楽しんでいる。 私は先客のいないカウンターに進み、スツールに腰をかけた。 「いらっしゃいませ、御園様。ご注文、お決まりでしたらどうぞ」 「シャンパンか白のスパークリングワインを、グラスで」 「銘柄はいかがしましょう?」 「そうね……甘めのものを選んでくださるかしら」 「かしこまりました」 恭しく丁寧なお辞儀をしたバーテンダーに、そっと微笑み返す。 ここは叔父の行きつけのバーだ。 確か、二十歳になったお祝いに連れて来てもらったのが初めてだった。 『京香ももう大人だ。お酒の飲み方も覚えなくてはね』 そう言った叔父のエスコートで訪れた場所。 それまでに何度も参加してきたパーティーとはまた違った空気と、大好きな叔父に大人として認められた喜びに、ドキドキしたのを覚えている。 たくさん並ぶお酒のボトル、その味と特徴を教えられた。 きちんと注がれたビールのおいしさ。 混ぜ合わせる度に新しい味を生み出すカクテル。 叔父が好む深く香り高いウィスキー。 どれもおいしくいただいたけれど、私が夢中になったのはワインだった。 『兄さんと一緒だね』なんて、叔父が苦笑していたのを思い出す。 .
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