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「何をおっしゃりたいか、わかりませんけれど……静かにしてくださらない? ワインがまずくなるわ」
そう言って、グラスを指ではじく。
チン……と高い音が響いた。おしまいの合図のつもりだ。
不愉快なの。もう口をつぐんでくださいな。
しかし彼はめげるどころかさらに続けて言った。
「嘘っぽい顔しかしてない君に、人間らしい美しさなんてあるのかな、と思ってね」
「っ、なんですって……!?」
カッとなった私はすぐに立ち上がり、佐川を睨みつけた。
私を見上げる男は、小馬鹿にしたように笑う。
「そんな仮面、剥いだらどうだ? 君はもっと感情的で口の聞き方も知らない子供だろう?」
「っ、侮辱するおつもりですか?」
言い返せば、彼は「はっ」とわざとらしく吐き出した。
「これが侮辱? 事実だろう。怒るってことは、図星だってわかっているんじゃないのか?」
「……っ、あなた、最低だわ……!」
不愉快どころの騒ぎじゃない。
趣味の悪いオヤジだわ。最低最悪の人間ね。
女を馬鹿にして楽しむなんて……!
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