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「帰るわ! あなたの顔なんて見たくもない!」
勢いよく椅子から立ち上がると、佐川はまったく気にもしていないかのように「ふうん」と言った。
「そうか、残念だな。御園が寂しがるだろうに」
「誰のせいだと思っているの!?」
「俺のせいだと言いたいのかな?」
「それ以外に何があると!? ふざけるのもいい加減にしなさいよ!」
私はいつの間にか、怒りに駆り立てられるように叫んでいた。
すぐ傍に、叔父が戻っていることにも気がつかずに。
「……どうしたんだ、京香」
「っ……!」
きっとこの瞬間、私の顔は蒼白になっていたことだろう。
叔父はというと、驚いたように目を見開いて私の様子を窺っている。
こんな場面を見られるなんて、はしたないと思われるに違いない。
最低最悪なオヤジのせいだとはいえ……立ち上がって声を荒げている私を、叔父は怪訝に思うに決まっている。
ああどうしよう、何か言わなくちゃ。
けれど、上手く微笑みを浮かべることさえ間に合わない。
もたもたしている私の元へ滑り込んできたのは、元凶の声だった。
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