《6》

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  いたたまれなくなって、私は鞄を手にした。 もうこの場にいたくはなかった。 「どうしたんだい、京香?」 「……ごめんなさい叔父さま、帰ります」 軽く頭を下げると叔父は戸惑ったように言う。 「え? なんでまた急に……話もまだのはずだろう?」 「っ……いいんです、また改めます」 言葉に詰まったのは、今日果たせなかった思いが胸を突いたからだ。 話。叔父にしたかったお願い。 私の現在置かれている状況。理不尽な立場。 奪われたもの。復讐。報い。 訴えたかったすべては、この場にいる男のせいで無に帰した。 「……では、失礼します。叔母さまにもよろしくお伝えくださいね」 叔父の方にだけにこりと微笑むと、彼は「ああ……」と漏らしてから表情を曇らせる。 「京香。本当に、大丈夫なのかい?」 何のことかはわかる。 叔父の気遣いには感謝したいと思っている。でも。 .
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