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「うっ。……気持ち悪い」
限界だ……。
「だー! お前飲み過ぎだって。ほらボタン外して向こうのソファで横になれ!」
静也くんは面倒臭そうに水をグラスに注ぎながら言う。
その時だった。
カランカラン
「すいません! 遅くなりました!」
朦朧とする意識の中、見上げると、
タキシードを脱いだだけの式場で会ったまんまのお兄さんが居た。
「やぁーと来たか、聖」
「お兄さん……」
「はは。30にもなってお兄さんって呼ばれるのは嬉しいですね。あ、静也、僕にオレンジジュース」
「この状況で飲むな!」
ソファに沈みながらも、お兄さんを見る。
お兄さんは目をパチパチさせた後、首を傾げた。
「そらちゃん、お酒弱いの?」
――言いたい事はそれだけか!?
呑気なお兄さんに腹が立つ。
こっちはずっとお兄さんが来るのを待ってたのに。
お水を持って来た静也くんをやんわり押し退けて、立ち上がった。
「ウチの親、どこ?」
「あー。僕の親とチーズ作りに北の国に」
「お兄さん、婚約者は?」
「破棄されちゃいまして、出戻りです。そらちゃんの荷物類は全部僕の家で、預かってますよ」
「は?」
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