第1話 

16/40

370人が本棚に入れています
本棚に追加
/40ページ
でも初めてを全て捧げたのは貴方。 『髪、長い方が俺は好き』 そう言って、私の髪を触るのが好きだった。 『モデルのKYOが写真集の撮影に来てるんだって!』 ミーハーな友達たちの付き添いで行ったあの海。 『そらちゃん。久しぶりですね』 待ち合わせに向かおうと飛び出した家の外で、お兄さんに会った。 大学に入ってから帰って来てなかったから四年ぶりだった。 いつも着飾らなかったのに。 スーツに、ワックスで髪を流し、厚化粧のおばさんの腰に手を回していた。 私は挨拶もせず、お兄さんを一瞥すると待ち合わせの海へ向かう。 振り返らなかったけど、――お兄さんはどんな顔、してたんだろう。 『見学していいよ。寒いなら向こうに火、炊いてるから』 ドラム缶で火を炊きながら、寒空の下、そのモデルは笑顔だった。 極寒とは言わないが、まだまだ寒さを残す4月……。 まだ上着を手放せないしスタッフも皆、厚着なのに。 「海、入った方が絵になるよなー。やっぱ」 バシャバシャと腰まで海に入って行く。 日本人離れしたスラリとした身長。 顔も小さいし、足も長いし綺麗な肌。 太陽に輝くキラキラした髪。
/40ページ

最初のコメントを投稿しよう!

370人が本棚に入れています
本棚に追加