370人が本棚に入れています
本棚に追加
/40ページ
でも初めてを全て捧げたのは貴方。
『髪、長い方が俺は好き』
そう言って、私の髪を触るのが好きだった。
『モデルのKYOが写真集の撮影に来てるんだって!』
ミーハーな友達たちの付き添いで行ったあの海。
『そらちゃん。久しぶりですね』
待ち合わせに向かおうと飛び出した家の外で、お兄さんに会った。
大学に入ってから帰って来てなかったから四年ぶりだった。
いつも着飾らなかったのに。
スーツに、ワックスで髪を流し、厚化粧のおばさんの腰に手を回していた。
私は挨拶もせず、お兄さんを一瞥すると待ち合わせの海へ向かう。
振り返らなかったけど、――お兄さんはどんな顔、してたんだろう。
『見学していいよ。寒いなら向こうに火、炊いてるから』
ドラム缶で火を炊きながら、寒空の下、そのモデルは笑顔だった。
極寒とは言わないが、まだまだ寒さを残す4月……。
まだ上着を手放せないしスタッフも皆、厚着なのに。
「海、入った方が絵になるよなー。やっぱ」
バシャバシャと腰まで海に入って行く。
日本人離れしたスラリとした身長。
顔も小さいし、足も長いし綺麗な肌。
太陽に輝くキラキラした髪。
最初のコメントを投稿しよう!