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『あれ? まだ帰ってなかったの?』
ボーッと岩場で海を眺めていたら、岩を渡りながら響が私の方へやってきた。
『帰りたくないの』
どうせ親は寝てるだろうし、隣の家の明かりや話し声が聞こえたら、耐えられない。
『ふぅん。あのさ、今、スタッフと打ち上げでバーベキューしてんだけど、来ない?』
『こんな時期に!?』
寒い中、バーベキューとか、馬鹿じゃないの?
そう思って響の顔を見上げた。
響は目を真ん丸にしたのち、ププッと笑いだした。
『なんだ、元気じゃん。撮影に使ったバーベキューの残りが大量にあんの。皆酔っぱらってるから来いよ』
薄い碧色の目が細く笑う。
差し出された手を取ると、指先はとても冷たかった。
『君、俺に興味無いだろ? 無いのに見に来てたな』
クスクス笑う響。
スラリとした身長は180はあるのかも。
細くて顔が小さいからもっと小さいかと思ってた。
『いえ。こんな田舎に撮影って珍しいし』
『ふぅん?』
そう言いながら、ホテルの庭先へ連れてこられた。
そのまま流される様に、酔っ払い達とバーベキューをした。
寒空の下で。
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