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響とのデートは海辺で。
大学が都内だったから頻繁に会えたけど、
サングラスや変装もせず、私と堂々と会うので、わざわざ地元で待ち合わせる事が多かった。
なんとなく、バーベキュー後も連絡を取り合い、
2、3回目のデートでキスされて、
それからなんとなく付き合っていた。
『やべ。お金降ろして無かった。明日から海外で撮影なのに』
『いくら?』
『んー。十万ぐらいかな?』
慌てる響に、ボーナスの袋からお金を取り出した。
『今時手渡しとか、あり得ないって思ってたけど良かった』
『悪いよ。すぐそこで降ろしてくるから』
浜辺から立ち上がる響の腕を、私が掴んだ。
そしてその腕に顔を埋める。
『明日から長く会えなくなるんなら、今はそばに居てよ』
初恋が失恋に変わってからずっと、ずっと、
ぐいぐい引っ張ってくれる響に甘えてすがって、
その感情を消したかった。
『じゃあ、このまま俺の泊まってるホテルに来てくれる?』
そう言われ、私は黙って頷いた。
私の心に侵入して、全て奪って、
全て捧げたのは、貴方だけ。
響だけ。
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