第1話 

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響とのデートは海辺で。 大学が都内だったから頻繁に会えたけど、 サングラスや変装もせず、私と堂々と会うので、わざわざ地元で待ち合わせる事が多かった。 なんとなく、バーベキュー後も連絡を取り合い、 2、3回目のデートでキスされて、 それからなんとなく付き合っていた。 『やべ。お金降ろして無かった。明日から海外で撮影なのに』 『いくら?』 『んー。十万ぐらいかな?』 慌てる響に、ボーナスの袋からお金を取り出した。 『今時手渡しとか、あり得ないって思ってたけど良かった』 『悪いよ。すぐそこで降ろしてくるから』 浜辺から立ち上がる響の腕を、私が掴んだ。 そしてその腕に顔を埋める。 『明日から長く会えなくなるんなら、今はそばに居てよ』 初恋が失恋に変わってからずっと、ずっと、 ぐいぐい引っ張ってくれる響に甘えてすがって、 その感情を消したかった。 『じゃあ、このまま俺の泊まってるホテルに来てくれる?』 そう言われ、私は黙って頷いた。 私の心に侵入して、全て奪って、 全て捧げたのは、貴方だけ。 響だけ。
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