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初めての夜は、全て響に任せた。
唇からゆっくり下へなぞられる指先。
キャミを肩からずらされ、脱がされ、
羞じらう私にキスを落としていく。
窓からは海が見えた。
星が輝いてた。
初めてのその行為が怖くて、ただ響の背中を抱き締めながら、その星を眺める。
響の体温や、痛みや、重さを感じながら、私たちは1つになった。
想像していたより苦痛を伴う行為で、
甘く喘ぐ演技なんてできなかったけど、
寂しさや、埋められない思いを忘れるには、
その行為は十分な熱を持っていた。
でも、あんなに好きだったのに。
海外での撮影は嘘。写真集なんて出やしない。
響はいきなり事務所も辞めて、雑誌のモデルも辞めて消えてしまった。
携帯は解約されてた。
十万持って逃げられたんだ。
最低な奴だった。騙された。
そう必死で憎んだ。
憎んで憎んで憎もうとしてた。
――そんな男が目の前にいる。
全てを委ねようとした痛い自分の姿が蘇る、嫌な過去。
その過去を全て思い出させる男が。
「久しぶりね。響」
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