第1話 

21/40

370人が本棚に入れています
本棚に追加
/40ページ
初めての夜は、全て響に任せた。 唇からゆっくり下へなぞられる指先。 キャミを肩からずらされ、脱がされ、 羞じらう私にキスを落としていく。 窓からは海が見えた。 星が輝いてた。 初めてのその行為が怖くて、ただ響の背中を抱き締めながら、その星を眺める。 響の体温や、痛みや、重さを感じながら、私たちは1つになった。 想像していたより苦痛を伴う行為で、 甘く喘ぐ演技なんてできなかったけど、 寂しさや、埋められない思いを忘れるには、 その行為は十分な熱を持っていた。 でも、あんなに好きだったのに。 海外での撮影は嘘。写真集なんて出やしない。 響はいきなり事務所も辞めて、雑誌のモデルも辞めて消えてしまった。 携帯は解約されてた。 十万持って逃げられたんだ。 最低な奴だった。騙された。 そう必死で憎んだ。 憎んで憎んで憎もうとしてた。 ――そんな男が目の前にいる。 全てを委ねようとした痛い自分の姿が蘇る、嫌な過去。 その過去を全て思い出させる男が。 「久しぶりね。響」
/40ページ

最初のコメントを投稿しよう!

370人が本棚に入れています
本棚に追加