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退職金も貰ったけど、高い家賃の手当は無くなったから、暫く実家に戻ろうとしたのに。
家そのものが無くなってたんだもんなぁ。
無職で家無しって、私、今めちゃくちゃダサくない?
憧れられたり真似されたり、陰口叩いてた友達にバレたら、良い笑い者だわ。
私だってプライドがあるし。
「そらさえ良ければ、隣にそらの荷物を置いている部屋がありますから居てくれて大丈夫ですよ」
「へ?」
「親御さんに言われたんです。『もし帰ってきて途方に暮れてたら貰ってやってくれ』って。ほら、預かってるそらの祖母の形見の婚約指輪もあちらに置いてます」
あっけらかんと、シーツにくるまったお兄さんは立ち上がった。
まるで日常会話をするように、婚約指輪の話をする。
これは本気なのかしら?
「聖さん、そらだって急に言われたら困るよ」
水と錠剤を持って現れたのは、響。
……響も上半身裸なんですけど。
「はい。これ、二日酔いに効くから」
目を伏せながら水と錠剤を渡された。
「それに、聖さんみたいにふらふらしてる人の婚約者なんてなりたい人、いるの?」
「酷いですよ」
響の肩に手を置いて、お兄さんは苦笑する。
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