第1話 

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「ブーケはどの種類にします?」 お兄さんが資料を広げて、お客へ渡していた。 ローズティーの甘い香りが店内を漂っている。 店内はブラウンを基調にした、大人っぽい雰囲気で、壁にはブーケの写真が沢山飾られている。 赤い文字で店の名前が入ったブラウン色のエプロン。 ネクタイを緩めたり、ブラウスの裾を捲るお兄さんにはエプロンは似合っている。 ズルズル看板を引きずりながら店内を観察してみた。 花屋というより、フラワーアレンジメントやブーケのデザインがメインの様で、入り口付近に少ししか花は置かれていない。 今日は薔薇とダリアとフリージア。 そして棚に並べられた花がついたサボテン。 「いらっしゃいませ。じゃ、帰りは六時過ぎるから」 2階の螺旋階段から、サングラスにデニムと上着、そして旅行バックを斜めにかけて響が現れた。 「はい。響も気をつけていってらっしゃい」 お客も、響の登場に真っ赤な顔をして頭を下げていた。 営業スマイルの響が妙に腹正しい。 「うん。そらもエプロン似合ってんじゃん」 「……馴れ馴れしく話しかけないで」 軽々と看板を奪われてイラッとしてしまった。
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