第1話 

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「ごめん」 「…………」 気まずい空気を作ってしまった。 早く行ってくんないかな? 「あんた、モデル辞めて何してんの?」 こんな田舎に響が居るって分かったら、皆騒ぐはずなのに。柚さえ知らなかった。 「高齢者の人の出張美容師。高齢者相手ならモデルってバレないから」 「……ふぅん」 なんであんな華やかな職業から、こんな人目を忍んで働いてんだろ。 「あ、そうそう。そらにはコレあげる」 看板を置いた後、ポケットからキーケースと一緒に名刺を取り出した。 渡された名刺を見ると、 『ハローワーク 職業相談第一部門  担当 梅木』と書かれた名刺。 ハローワーク……。 「響! あんたムカつく!」 「親切だろーが。聖さんに養って貰おうとか考えんなよ!」 そう悪態をついて、走って消えていった。 聖さん聖さん聖さん。 本当にムカつくんだけど。てか十万パクったのは忘れてるのかしら? 響が消えた道を睨み付けながら、不意に溜め息が溢れてしまった。
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