第1話 

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「私、出ますよ」 「ありがとうございます」 階段を降りながら、指差された電話のある方へ歩いていく。 「はい。お待たせ致しました」 ん……? この店の名前って何だっけ? 『ブライダル雑誌『Gl ck』を見て電話したんですが、あの……『Blumen und Himmel』ってお店ですか?』 ひー!! ブライダル雑誌?? Blumen und Himmel? 「はい。どういったご用件でしょうか?」 4年勤めた歯科医院の受け付けの意地だ。 誤魔化してやる! 『手作りブーケをそちらでお願いしたくて。来月は予約いっぱいと書いてましたが』 「少々お待ち下さい」 保留を押した後、私は確信した。 うん。無理だった。店を知らない私が安易に手を出すものじゃない。 そう思ったらすぐに、誰かが受話器の保留ボタンを押す。 「はい。お電話代わりました。はい。来月は金土は予約いっぱいですね。式の日にちは……? ああ。そうなんですね。おめでとうございます。はい。予算は」 ペラペラと対応してるこの筋肉質のおっさんは、 静也くん? サンドイッチの乗った皿を片手に、なんで静也くんが対応してるの?
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