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「そらちゃん、メモ帳取って。んでこのお皿と交換してくれる?」
「う、うん」
レジの横にあるメモ帳とペンを、お皿を受け取ってスライドさせた。
どうなってんだ……?
「よし。じゃあ俺は仕事に戻るから。このメモ帳とサンドイッチ、聖に渡しといて。レジの横のはお前の」
「――どういう事?」
静也くんは、眼鏡を外して、赤いフレームを肩の袖でごしごし拭いた。そして、あご髭を触りながら苦笑する。
「聖の婚約者は大変だぞ。あいつ、一人じゃ生きれないぐらい何もできない。服のボタンだって誰かに上手にねだってとめて貰おうとする」
「は?」
「聖は天然の女ったらしって事。まぁ花とブーケ教室代の方がホスト通うより安いからな」
「だから、何言って……」
「じゃあ次に来た時には完成させましょうね」
「はい。申し訳ないので今日予定してたダリアと薔薇全て買い取りますわ」
「え?」
「せっかく聖さんが選んで下さったんですもの」
「……素敵な花嫁さんに貰って頂けるなら嬉しいです。今包みますね」
うわぁ! うわぁ……。
お兄さん、魔性だわ。
お兄さんのあの笑顔を見るためだけに、あの花たちは売られてる気がする。
なんか……。
馬鹿らしくなってきた。
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